固定電話を設置する家庭が減少して、当然それを利用した通話・通話料も減少しています。しかし、固定電話とは異なりスマートフォンは出来る事が多彩であり、年々性能は進化して処理能力が向上するのに併せて、通信量や通信費も増加しています。
インターネットの使い方は多様化していますが、家庭ではWi-Fi環境を利用するケースが増えています。光回線の導入が多いですが、様々な事情により光回線を導入しない・出来ないケースでは、工事不要でコンセントを挿せば直ぐにWi-Fi接続が出来る、据え置き型無線ホームルーターが注目されています。
3大キャリアの据え置き型無線ホームルーターで、最も安く利用出来るのはどこか?掘り下げて解説します。
通信費は増加しています
総務省が発表した令和二年版白書では、2019年の世帯の移動電話通信量の支払金額は、103,466円になっていて、毎年増加しています。
スマートフォンの通信料は以下の様な推移をしています。
年 | 移動電話通信料 |
2010 | 79,918円 |
2011 | 80,566円 |
2012 | 81,477円 |
2013 | 83,099円 |
2014 | 86,239円 |
2015 | 91,306円 |
2016 | 96,306円 |
2017 | 100,250円 |
2018 | 103,343円 |
2019 | 103,466円 |
(出典)総務省「家計調査」(総世帯)により抜粋作成
管首相が官房長官時代から熱心に取り組んでいた、「携帯電話料金の値下げ」が徐々に効果を発揮して、増加傾向には近年歯止めが掛かっています。しかし、年々コンテンツは大容量化してきて、動画もゲームも大容量化は直接クオリティーアップに繋がる為、今後もこの傾向は変わりません。
また、現在は一部に限られている、新世代の5G通信が本格的に普及してくれば、大容量を快適に楽しむ環境が整う事の良さがある反面、一気に通信量が増える事は通信料の増加にも繋がります。現在のインターネットを利用する人が使っている端末は、パソコンを抜いてスマートフォンが1位になっています。
(出典:総務省)
しかし、スマートフォンを利用する人の多くは、通信料金の増加を抑える自衛策として自宅ではWi-Fi環境を利用していて、携帯電話会社の回線を使っていません。
実際のインターネットで利用するデータ量は、携帯電話回線の増加割合と比較にならないくらいに、増加しています。
通信量は更に増加しています
総務省は、2021年7月に固定系ブロードバンドインターネットにおけるトラヒック(通信量)の実態を把握するためインターネットサービスプロバイダ(ISP)9社(「(株)インターネットイニシアティブ」、「NTTコミュニケーションズ(株)」、「(株)NTTぷらら」、「(株)オプテージ」、「KDDI(株)」、「JCOM(株)」、「ソフトバンク(株)」、「ニフティ(株)」及び「ビッグローブ(株)」)や、インターネットエクスチェンジ(IX)5団体等の協力の下で、2021年5月のインターネット回線の集計と試算を発表しています。
(出典:総務省)
赤い折れ線グラフ固定系ブロードバンド回線の扱うデータ量は年々増加の一途で、ここ数年は特に急激に右肩上がりになっています。(前年同月比25.6%増)
1契約(1回線)あたりに換算すれば、1か月当たりの下り(ダウンロード)が約175GB利用です。
2020年国勢調査の速報集計では、1世帯当たりの人数全国平均は2.27人ですから、1回線あたり、少なくとも2台から3台のスマートフォンが、Wi-Fi回線を利用していると考えられ、それ以外にパソコンやタブレット、テレビでの動画鑑賞等を1人あたり77GB程度は、毎月楽しんでいる計算になります。
据え置き型無線ホームルーターが注目される理由
特に家族数人で、インターネット回線はスマートフォンのみの場合は、各人が使う容量プランを携帯電話会社と契約する必要がありますが、自宅にWi-Fi環境が有れば、外出時の使用するだけに絞れることから、安価な小容量プランに移行が可能になります。
多くの場合、その手段で全体の通信料は下がりますが、例外もあります。家族の誰もが、スマートフォンだけでなくインターネット回線を必要としていない場合で、現状最低限の容量プランを契約している場合は、Wi-Fi環境を用意するメリットは基本的に有りません。
動画鑑賞などを多くする場合でも、単身世帯であり、利用する端末がスマートフォン以外には無く、それだけで完結している場合は、キャリアが提供する使い放題プランだけの方が、Wi-Fi環境を用意するよりもトータルの通信費は安くなります。しかし、国は働き方改革を提唱していて、在宅勤務のオンライン会議・テレワークが広がり、自宅でインターネット回線を使って仕事をする必要が多く出てきました。
オンライン授業が必須になった大学生だけでなく、小学校では一人一台のiPadを配布して家庭学習にも利用が広がり、保護者のPTA会議もオンラインで開催するケースが増加しています。
スマートフォンのテザリング機能を利用すればパソコンやiPadの利用も可能ですが、通信費は一気に割高になります。テザリングには容量制限が設けられているケースも多く、速度制限を受けた後では、事実上全く使い物にならないスピードしか出ません。
自宅でのWi-Fi環境構築には、光回線の導入が最も適していますが、思い立ったら即導入というわけにはいきません。光回線の導入には基本的に工事が必要で、申込みから早くても数週間、場合によっては1ヵ月から2ヵ月以上待たされるケースが有ります。また、申込みを行っても、残念ながら工事が出来ない場合もあります。
賃貸物件では、光回線の工事に伴う現状変更を、家主に認められない場合があります。回線の引き込み工事で穴を空ける必要や、構造物の改造が必要な場合は、家主側の許可が必須です。
購入物件でも、構造上の問題で光回線の工事が行えないケースや、マンションの場合は共有スペースに機材を置く場所が無い場合・管理会社や他の居住者の同意が得られない場合には、光回線の導入は困難です。
「物理的な問題」・「時間的な問題」・「何となく面倒くさい」等々、光回線を導入出来ない・しないユーザーのWi-Fi環境の構築に、据え置き型無線ホームルーターが注目されています。
3大キャリアから出揃う
据え置き型無線ホームルーターは、工事不要で到着後コンセントに挿すだけで、設置後直ぐにインターネット回線が使える様になります。光ファイバーケーブル回線が来ていないエリアでも、無線の電波が拾える場所ならすぐに開通出来ます。
工事不要で自宅に快適なWi-Fi環境が使える様になり、最も光回線に近い環境を導入出来るのが据え置き型無線ホームルーターです。
引っ越す時も廃止工事の手間や費用も不要で、オンラインか電話で住所変更の手続きをすれば、引っ越し先で当日から回線使用が可能です。引っ越し先での新たな工事費は、当然発生しません。(docomoは正式な発表はまだありませんが、ユーザーの利便性を考えれば同等になる可能性が大きいです)
ソフトバンクの「SoftBank Air」が、このジャンルでの開拓者と言えます。家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」によれば、2020年のホームルーター製品別販売台数で、ソフトバンクの「SoftBank Air」シリーズがシェア7割(72.1%)を占め、圧倒的な人気です。
そこに、auが2021年8月6日から「Speed Wi-Fi HOME 5G L11」を発売して、NTTドコモは2021年8月27日から、「ドコモhome 5G HR01」の発売を開始しました。
大きくってなってきた据え置き型無線ホームルーターマーケットで、今まで一強だった「SoftBank Air」に対し、競合する2社が本格的に参入してきた構図が明確になり、ここに来て3大キャリアが全て出揃いました。
現状は4Gのみで5Gには対応していない「SoftBank Air」に対し、臨む2社は超高速で未来のイメージが先行している「5G」を全面に押し出す戦略をとっています。
公称速度
公称値とは、サービスを提供する会社が出した、理論上の最大値です。挑戦者のau・docomoが最もウリにする差別化ポイントが、この通信速度の公称値です。
具体的な公称値を見ていきましょう。
通信速度の単位は「bps」という単位で、数値が大きくなるほど高速になります。bpsはBit per secondの略語で、1秒間にどれだけのデータ量を転送出来るかという意味です。1,000bpsは1kbpsであり、1,000kbpsが1Mbpsになり、1,000Mbpsは1Gbpsになります。
〇「ドコモ home 5G HR01」
5Gと4Gで理論値を分けて掲載しています。
・5G
受信時最大4.2Gbps
送信時最大218Mbps
・4G
受信時最大1.7Gbps
送信時最大131.3Mbps
〇「WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G L11」
auでは、4Gを分けての表示はしていません。5Gの理論値のみ掲載しています。
受信時最大2.7Gbps
送信時最大183Mbps
〇「SoftBank Air」
SoftBankは企業として5Gの展開を行っていますが、据え置き型無線ホームルーターには、未だ5G対応タイプを発売していません。
受信時最大962Mbps
送信時最大 未掲載
公称値はあくまで計算上・理論上の最高数値であり、実際にその速度が出ることは基本的にありません。公称値と実際のその速度差は、光回線等の有線よりも無線が大きくなります。受信する構造物の形状や、その中での受信機の位置・そこに到達するまでも多くの物に影響を受けるからです。また、据え置き型無線ホームルーターが受信出来る理論上の速度と、接続した機器の理論上の速度も異なります。
たとえば、理論上は受信時最大速度4.2Gbpsの「ドコモ home 5G HR01」も、同じく理論上ですが、Wi-Fi接続 最大受信速度(下り)1.2Gbps・有線LAN接続 最大受信速度(下り)1.0Gbpsになっています。
これは、実際に接続する機器で計測した時に、理論上の最大値でも1Gbps程度になるということです。
5Gのメリットは?
期待の高い新世代の5G通信の、今までと最も異なるのは通信速度です。新しい2機種は、これを武器に挑戦しているため、5Gについて解説します。
5Gは2つの周波数帯「sub6」と「ミリ波」を使ってデータ通信を行います。
「sub6」は周波数が低い帯域幅で、「ミリ波」は高い帯域幅です。
「sub6」は4Gに近く、現在持っている技術の転用が効きます。
「ミリ波」に比較すれば電波が遠くまで届き、障害物の影響も受けにくい特性があります。その分、4Gと比較して劇的な速度向上は見込めません。
「ミリ波」は電波の届く範囲が狭く、障害物の影響を受けやすい反面、「超高速通信」で「超低遅延」の新世代の速さが実現出来ます。よく言われる、「自動車や建設機器の自動運転システムや遠隔操作」・「大容量動画の瞬時ダウンロード」は、同じ5Gでも「ミリ波」の事を指しています。
「ドコモ home 5G HR01」も「WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G L11」も、5Gを全面に出していますが、「ミリ波」には対応していません。
据え置き型無線ホームルーターで、5Gを実際に利用した速度はまだ判明しませんが、現在サービス中の5G利用者の声は、必ずしも良好ではありません。たとえば、ツイッター上で「#5G速度」で検索すると、多くの不満の声があがっています。
“4Gのスピードで全く不便感じてないのに、5Gが微妙に入るエリアで頑張って電波拾って3G以下のスピードになるのバグすぎるやろせめて4Gに切り替えれたらええのに”
4Gのスピードで全く不便感じてないのに、5Gが微妙に入るエリアで頑張って電波拾って3G以下のスピードになるのバグすぎるやろ
せめて4Gに切り替えれたらええのに— バーニング佐竹 (@EG_satake) August 18, 2021
“5G繋がったからスピードテストしたら7M出なくて泣いたなんじゃこれ?”
5G繋がったからスピードテストしたら7M出なくて泣いた😞💦
なんじゃこれ? pic.twitter.com/br8HGEf1Op
— たいぞ~🌺ハナカナ養分 (@taizosedori) August 17, 2021
5G本来の良さを全面的に享受出来るのは、現実的にはまだ先の話です。実際には、現在の4G回線が、当分の間は主力になる事は明らかです。SoftBank Airの5G対応モデルを、当然SoftBankは準備していると思われます。現状慌てていないのは、そんな事情があるからです。
3社の本体価格を比較
据え置き型無線ホームルーター本体を、購入する必要があります。単独で機器を購入することは出来ません。現在契約しているSIMをそのまま利用する事は出来ず、新たな契約(事務手数料3,300円)をすることになります。
本体価格は、次の通りです。
○「ドコモ home 5G HR01」 39,600円 (月々サポートで毎月分割代金分を割引)
(出典:GMOとくとくBB ドコモ home5G)
○「WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G」 5,940円
(出典:UQWiMAX公式)
本体価格は最も安くなりますが、分割払でも割引制度はありません。36回払いで、月額165円になります。
○「SoftBank Air」 71,280円 (月々割で毎月分割代金分を割引)
(出典:SoftBank Air 公式)
本体価格は最も高額ですが、36回の分割払いで実質無料になります。
3社の月額料金を比較
各社の月額使用料は以下になります。
ドコモ home 5G | WiMAX +5G | ソフトバンクエアー | |
基本月額 1年目 | 4,950円 | 4,268円 | 3,080円 |
基本月額 2年目 | 4,950円 | 4,268円 | 5,368円 |
基本月額 3年目 | 4,950円 | 4,818円 | 5,368円 |
3年間合計金額 | 178,200円 | 160,248円 | 165,792円 |
この価格は、2023年1月4日現在のものです。WiMAXの価格設定は、ここまでに紆余曲折があり、発売を延期してまで当初の予定からは修正しています。月額料金だけを見るとWiMAXが最も安価となっています。
「WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G」は25ヵ月間550円が割引きされるキャンペーンを展開中で「SoftBank Air」は1年間月額割が適用されるため、年度によって月額料金に変更が有ります。
キャッシュバック特典を加味して比較
実際に掛かる費用をトータルで考えれば、契約することで得られる特典・キャッシュバックについても見ていきましょう。
○「ドコモ home 5G HR01」
・GMOとくとくBBサイトで18,000円キャッシュバック
GMOとくとくBBサイトにて「home 5G プラン」の新規契約と「HR01」のご購入で18,000円のキャッシュバックされます。
○「WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G」
・UQオンラインショップ限定キャッシュバック
UQオンラインショップでの申込み限定で、新規契約および月額料金支払うと、5,938円キャッシュバックされます。
○「SoftBank Air」
・SoftBank あんしん乗り換えキャンペーン
・Airターミナル5 GoGoキャンペーン
ここまでは、公式サイトの特典です。
「SoftBank Air」の契約は、公式サイト以外に正規代理店サイトでも行えますが、正規代理店での契約方がお得です、公式のキャッシュバックに加えて、正規代理店独自のキャッシュバックを受け取ることが出来るからです。何処で契約しても、契約後の「SoftBankエアー」のサービスは全く同一で、アフタフォローもソフトバンクが行います。
これらのキャッシュバックを加味した上で、実際に掛かる月額実質料金を計算してみましょう。
ドコモ home 5G | WiMAX +5G | ソフトバンクエアー | |
基本月額 1年目 | 4,950円 | 4,268円 | 3,080円 |
基本月額 2年目 | 4,950円 | 4,268円 | 5,368円 |
基本月額 3年目 | 4,950円 | 4,818円 | 5,368円 |
3年間合計金額 | 178,200円 | 160,248円 | 165,792円 |
キャッシュバック | 18,000円 | 5,938円 | 33,000円 |
3年間実質合計 | 160,200円 | 154,310円 | 132,792円 |
実質月額料金 | 4,450円 | 4,286円 | 3,688円 |
実際に支払う月額固定費を比較すれば、「ソフトバンクエアー」が最も安く利用出来ます。
スマートフォンのセット割を加味して比較
据え置き型無線ホームルーターを契約する事で、自社のスマートフォンの月額料金を割り引く「セット割」を3社共おこなっています。
据え置き型無線ホームルーターを設置した場合に、自宅ではWi-Fi接続して携帯電話会社の回線を使わない事になります。そのため小容量のプランに移行した方が合理的です。自宅でWi-Fi環境を持つスマートフォンユーザーの多くは、月に3GBまでの容量で足りる方が大半です。
小容量プランは格安SIMの料金の方が一般的にはメリットが有りますが、セット割が効かなくなる上に、キャリアのサブブランドでは格安SIMと遜色ないプラン提示もあります。
最大手docomoは、サブブランドを何故か展開していません。そのためdocomo契約者が「ドコモ home 5G HR01」を導入して、スマートフォンの契約を3GB利用するプランに変更した場合、ギガライトプラン3GBまで 月額4,565円から550円の割引きを受ける事になります。(1GB以下では割引きは無くなります・5GB以上で割引きは1,100円になります)
UQ mobileという価格の安いサブブランドを展開するauですが、「WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G L11」の導入でUQ mobileの割引制度は無く、au契約者のみになります。ピタットプラン~4GBで、月額4928円から550円の割引きを受けられます。
SoftBankは、メインブランドだけでなく、サブブランドY!mobileでも、「SoftBank Air」を導入する事で割引きが受けられます。3GBのシンプルSプランでスマートフォン契約を行った場合、月額2,178円から1,188円の割引きを受ける事が出来ます。
(出典:ワイモバイル公式サイト)
家族4人で据え置き型無線ホームルーターを導入して、家族割も加えた月額支払いシミュレーションは、以下の様になります。
ドコモ home 5G | WiMAX +5G | ソフトバンクエアー | |
3年間合計金額 | 178,200円 | 160,248円 | 165,792円 |
キャッシュバック | 18,000円 | 5,938円 | 33,000円 |
3年間実質合計 | 160,200円 | 154,310円 | 132,792円 |
実質月額料金 | 4,450円 | 4,286円 | 3,688円 |
docomo | au | Y!mobile | |
携帯電話 | 4,015円 | 4,378円 | 990円 |
家族四人 | 11,660円 | 13,112円 | 3,960円 |
月額合計 | 16,110円 | 17,398円 | 7,648円 |
実際に支払う月額固定費を、家族のスマートフォンの費用まで考えれば、「ソフトバンクエアー」が圧倒的に安く利用出来ます。